STORY
語るべき事件はもう起きていた。
小説家の吐く言葉からは
力が抜け落ち、肉が削げ落ちていく
酷く乾く空気にさらされて、喉がはりつき、
世界は砂一面の黄色の世界。
生い茂っていた緑はもう、
水を汲み上げる事を止めた。

その砂漠の前、
黄砂吹き荒れる風に立ち向かっていると、
その風が体にまとわりついていく。
けれども、その風の音は聞こえない。
その風に阻まれ彼の言葉も聞こえない。

音をなくした世界は
全てを忘れたかのように変わらず動き、
やがてゆっくりと崩壊し、
破綻していった。
カナリアチラシ

カナリアチラシ