STORY
始まりは、ちょっとした嘘だった。
すぐに冗談になる予定だったのに
九段下の大津本食堂はそれを真実にしてしまった。

父親をなくした娘は、夫をなくした母を笑わせる為、
夫をなくした母は、父親をなくした娘を守る為、
嘘という空気を吸い続けた。

大津本食堂を訪れた人々もまた、嘘を吸い、嘘を吐き出し
少しずつ二人の周囲を歪ませる。

嘘つきが食堂で料理を食べたのか、
食堂の料理を食べて、嘘つきになったのか。

嘘が嘘を呼び、他人の嘘まで呼び込み、
うずたかく積もった姿は、まるで、あのヒマラヤのようだった…。