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■STORY

『 石にかじりついてでも物語を引き摺り出す。
あたしはシュリーマンになるんだ! 』



人は一体どれだけの自分を嫌うのだろう。



大沢サツキはいつも通りの出勤途中、人生で初めて踵を返し、

家へ、必死に家へと向かいながら、呆然とそんな事を考えていた。



たった一匹のクロネコのせいで、突然えも言われぬ孤独と不安に襲われた最悪の朝、

彼女を家へと運ぶその足のステップは、スラップスティックを思わせ、

50mを10秒かける最大船速で、彼女の身を広大な十畳の部屋に潜り込ませた。



地獄のファンファーレが轟く静謐なその場所は、普通との戦争の最前線。

誰にも聞こえないそれらの音楽は、サツキの頭の中で物語を求める声に変わっていった。



ハインリッヒ・シュリーマン。

ただの空想物語を現実に引き戻した男。

彼女は彼の背中を蹴って、一歩、宇宙に向かってジャンプして、今いる場所に着地する。



その日は、冬の空にお似合いの、天井が高い気持ちのいい朝だった。


彼女は、非日常を必死に日常にする。使えるものは全て使って。