STORY
私の世界は、あの時から溶けだした。
微熱があるかのように、揺らぎ、輪郭を失っていった。
人も、街も、車も、森も山も世界も自分でさえも
メガネを外すのと同じ速さで溶けていく。
それでも、物理方程式を踏み台に、
私は自分の世界を再構築する方程式を打ち出した。
だのに、あなたはその世界にずかずかと入り込む。
父さん、あの時、あなたは私の世界の神様になった。
新しく作った世界はすぐに揺らぎを始め、
溶け始めるのは時間の問題。
以前より激しく、以前より汚く、以前より罵りながら。
夢みたいなこの世界は、数式でできている。